スイスフラン(CHF)の大暴落により歴史的な悲劇が訪れた

スイスフラン(CHF)の大暴落により歴史的な悲劇が訪れた

スイスフランが歴史に残る大暴落を見せました。

2015年1月15日、スイスフランは為替相場の急激な大変動により、最大41%も暴落したのです。この出来事をスイスフランショックと言われています。

スイス国立銀行(スイスの中央銀行)が発表した対ユーロ市場の介入の停止発表によって、市場は混乱、その結果、スイスフランの大暴落へとなりました。

『有事の際の、日本円とスイスフラン』とも言われるスイスフランに一体何が起きたのでしょうか?

歴史に残るであろうスイスフラン大暴落のトリガーは?

スイスフランの大暴落。これを誘引したトリガー(引き金)は、スイス国立銀行のギブアップ宣言によるものです。

詳細はこうです。スイス国立銀行は、対ユーロ市場において、1.2を割り込むようであれば永続的に為替介入を行うと宣言していました。

中央銀行にあたる機関の発言ですので、それは国の政策とも言えます。

投資家からすると、1.2付近になると介入が入る為、上昇するという鉄板的な市場でした。

実際、対ユーロで1.2付近になるとそれを割り込ませない介入が行われて、防衛ラインは死守されていました。

スイスフラン チャート

上記はスイスフランの対ユーロの4時間足チャートです。1.2を割り込ませない攻防が繰り広げられていた事がわかります。

ところが2015年1月15日、突然スイス国立銀行は、「資金の限界」を理由に介入を中止すると宣言、その結果スイスフランは大暴落となりました。

為替は一般的に対ドルレートで表現されますが、経済的に結びつきが強く、かつ流動性がある通貨同士の場合、ドルを介在しない取引も行われます。

今回、大きな変動が起きたユーロとスイスフランはまさに、この象徴とも言える通貨ペアです。

ユーロペッグ制を敷いていたスイスフラン

それではなぜ、対ユーロで1.2で為替介入を行っていたのか?

それはスイスはユーロにおいてペッグ制を敷いていたことによります。

ペッグ制とは、為替市場への介入や金利調整を行う事で、特定国の通貨と自国の通貨を一定の水準に留める施策です。

スイスが行なっていたユーロペッグは、1ユーロの上限を1.2に抑えるという事なのです。しかし、これは非常に珍しいペッグ制で、通常は、上限と下限をセットで定めるものですが、スイスが行なったのは、上限のみ定めるというものでした。

このユーロペッグ制をスイスが導入したのは、2011年9月の事です。

ユーロ圏の有事の際には特に買われやすいスイスフラン

2007年のサブプライムローンを皮切りに、2008年のリーマンショック、2010年のギリシャの債務危機等、特に深刻度が増したユーロ圏の経済。

一時に比べると最近はギリシャを除いて落ち着いてきた見方もありますが、依然としてECB(欧州ユーロ圏の中央銀行)が大量の資金供給を行い、民間銀行に欧州各国の国債を買わせる、といった金融政策に支えられた面が大きいと言えます。

スイスを取り巻く巨大な経済圏では、その金融緩和が行われているため、ユーロの受け皿として日本円同様に安全な通貨とされるスイスフランに自然と買いが集まるのです。

その結果、ユーロが売られてスイスフランを買う展開へとなりました。

しかしながらスイスの経済はと言いますと、輸出全体の50%がユーロ圏であり、輸出がGDPに占める割合が高く、スイスフラン高ユーロ安は容認できるものでありません。

自国の経済を守るためにユーロペッグ制が導入されました。

これが対ユーロで1.2が死守されてきた理由です。

スイス中銀による為替介入

ユーロ圏の経済低迷によってスイスフランが買われると、通貨高となります。

その通貨高に伴うデフレ圧力にスイスは苦しみ続けています。(ちなみに、日本も同様の悩みを持っていますが、スイスはその日本よりも金利水準が低く設定されています。)

そのスイスフラン高を抑制しようと、スイス中銀は為替市場で公に介入(ユーロペッグ)を行ってきました。

スイスフラン高の防衛ラインとして公表してきたのが、ユーロ・フラン(EUR/CHF)で1.2の水準です。(数字が小さくなるほどフラン高を示します。)

EUR/CHF為替相場

しかしながら、この防衛ラインを中央銀行が突如放棄し、為替介入を辞めると発表したことで、歴史的な為替変動が起こるのも当然でしょう。

それほど、スイス中銀の防衛ラインは為替市場から信頼感を持って見られていたのです。

なぜ、スイス中銀は為替介入を辞めたのか?

これまで守ってきたスイスフラン高の防衛ラインを、なぜ突然放棄し、為替介入を辞めたのか?と疑問に思います。

自国通貨安に対抗する為替介入は、その国が保有している外貨準備金が限度となるため、資金が無くなれば当然ストップします。

反対に今回のスイスフラン高に対するスイス中銀の介入のように、自国通貨高に対抗する為替介入に限界はありません。何故なら、通貨をいくらでも刷って、他国通貨(資産)を購入すれば良いからです。

これが、スイス中銀の防衛ラインは決壊することは無いと思われていた大きな要因でもあります。

では何故、スイス中銀が為替介入を辞めたのか?ということですが、ユーロ買いスイスフラン売りの介入を続けると言うことは、スイス中銀のBS(貸借対照表)のなかにユーロ建ての資産が溜まっていくこととなります。

そしてこれが毀損すればスイスの納税者の負担となる為です。

落ち着いたとはいえ、まだまだ予断を許さないユーロ圏の経済の低迷により、欧州中銀は、金融緩和の姿勢をさらに強めようとしています。

事実、1月22日には、ユーロを使う19カ国の金融政策を決める欧州中央銀行(ECB)の定例理事会を開き、ユーロ加盟国の国債を購入し、お金を大量に金融市場に供給する「量的緩和政策」の導入も決定しました。

これによって、これまで以上に市場にユーロがあふれることになり、それに対抗するにはスイス中銀は一層大量のユーロを買わなくてはいけなくなるのです。

スイスが1ユーロ買う間に欧州中銀は3ユーロ売る、所詮は経済の規模が違う、などという話も聞こえるほどです。

欧州中銀が緩和姿勢を強めれば強めるほど、スイス中銀はどんどんユーロ建ての資産が溜まり、リスクが高まる一方なのです。

今回の突然のスイス中銀の為替介入撤退には、そう言った背景があるようです。